
ビニールは「レジ袋」や「商品の梱包材」など、普段よく手に触れる身近な存在でもあります。
ビニールという物質はプラスチックの一種であるため、ビニールの歴史を知りたいのであれば、まずはプラスチックの歴史から知っておきましょう。
また、包装資材として活用されているビニール袋の歴史を知るためには、包装資材の歴史にも注目するとより理解が深まるはずです。
ここからは、プラスチックの歴史と包装資材の歴史について解説します。まずはプラスチックの歴史について、詳しく見てみましょう。
1-1.プラスチックの歴史
プラスチックにはさまざまな種類があり、それぞれ発見・工業化された年代が異なります。石油化学品であるプラスチックが辿ってきた歴史を、プラスチックの種類とともに見てみましょう。
年代 |
出来事 |
数千年前 |
アカシアの木に寄生する昆虫から抽出される「シェラック」という天然樹脂が使用されていた
プラスチックの前身とされる |
1835年 |
フランスのルノーによって、ポリ塩化ビニル粉末が発明される
→工業化には至らず |
1839年 |
ドイツのシモンによって、ポリスチレン粉末が発明される
→工業化には至らず |
1870年 |
アメリカのジョン・ハイアットによって、天然素材であるセルロースを使って合成される「セルロイド(半合成プラスチック)」が発見・実用化された |
1872年 |
ドイツのバイエルによってフェノール樹脂が発明された(原料に動植物を使用しない世界初の人工合成樹脂) |
1907年 |
アメリカのベークランドが、フェノール樹脂を「ベークライト」として工業化 |
1917年 |
セルロイド(可燃性が高い)の弱点を改善した、不燃性の酢酸セルロースが生産開始 |
1920年 |
熱硬化性のユリヤ樹脂が発明・工業化された |
1926年 |
ドイツのシュタウティンガーが、プラスチックを作る高分子(ポリマー)が鎖状の長い分子で構成されていることを発見 |
加工が容易なポリ塩化ビニールの開発に成功・工業化→プラスチック需要の高まり・化学工業の本格的なスタート |
1930年 |
アメリカ・ドイツでポリスチレンの工業化 |
1934年 |
ドイツで透明度が高いアクリル樹脂の工業化 |
1938年 |
「ナイロン(ポリアミド)」が発明された(アメリカの化学者カロザース(デュポン社)らの発明品) |
1941年 |
ナイロンの工業化 |
1945年~ |
「ビニール(ポリ塩化ビニル)」「ポリ(ポリエチレン)」「スチロール(ポリスチロール)」「ベークライト(フェノール樹脂)」などのプラスチックが一般市民に普及し始めた |
1955年~ |
プラスチックの大量生産・大量消費の時代
大規模なコンビナートが作られ、プラスチックが日用品に広く使われるようになった→ポリプロピレン、ポリアセタール、ポリカーボネートの登場 |
1965年~ |
より高性能なプラスチックの開発・製造
ポリスルホン、ポリイミド、PPS樹脂、PEEK樹脂など |
現在 |
バイオマス由来プラスチック、生分解性プラスチックなど、環境の負担を軽減する新たな素材の研究開発が進む |
150年ほど前から工業化され始めたプラスチックですが、現在でも日常生活のあらゆるものに使用されており、身近で馴染み深い存在となっています。
現在では、技術の向上に伴い、環境に優しいプラスチックの研究開発も進んでおり、プラスチックは今後も人間の生活に密接に関与することが考えられます。
1-2.包装資材の歴史
現在ビニールはレジ袋などの包装資材としても広く使用されています。
しかし、包装資材にもさまざまな種類があり、包装資材として使用される材料は時代や文化とともに移り変わってきました。
ここでは包装分野の歴史について、見ていきましょう。
時代 |
包装資材の主な素材・用途など |
紀元前4000年ごろ |
麻(あさ)の布が使用されていた可能性 |
縄文時代 |
稲作が広まり始め、藁(わら)が使用され始めたと推察される |
甕(かめ)や瓶といった土器の使用 |
奈良時代 |
- 藁で作られた筵(むしろ)が使用された
- 紐や縄の使用
|
平安時代 |
陶磁器や漆器とともに桶が使用された |
鎌倉時代 |
樽(たる)の使用(※ヨーロッパでは3世紀よりも前から使用) |
江戸時代 |
衣類などを包むために風呂敷が流行 |
大正時代 |
1923年にアメリカのメーカーが作成したものを参考に、国内で紙製の袋を試作・国産化して商品化(当時はセメント用紙袋として開発) |
昭和後期 |
1970年代にビニール袋が普及 |
日本では、麻や藁、木材などの植物性繊維の素材、陶磁器や土器といった自然由来の素材が使用されてきました。
近代になると安価かつ大量生産可能で、強度も高いプラスチック材料のビニール袋が広く普及しました。
ビニール袋が普及し約50年経ち、技術開発が進んだ現在では、さまざまな種類のビニール袋が使用されています。
1-3.ビニール袋とポリ袋の違いは?

コンビニのレジ袋などは、一般的に「ビニール袋」や「ポリ袋」とよばれており、この2つの言葉はほぼ同じ意味で使われています。
しかし厳密に言うと、「ビニール」と「ポリ」は種類が異なるプラスチック素材です。
ビニール |
塩化ビニール樹脂を使用したプラスチック |
ポリ○○ |
ポリエチレン(エチレンを重合)やポリプロピレン(プロピレンを重合)など合成高分子を使用したプラスチック |
コンビニのレジ袋など、「ビニール袋」と称される袋の多くは、ポリエチレンやポリプロピレンから作られています。
そのため、「ビニール袋」よりも「ポリ袋」の方が、素材の名称により近い呼称であるといえます。